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火力発電 ~CO2削減へ

2007-06-20 [記事URL]

▼詳細
電力会社が火力発電所の二酸化炭素(CO2)の排出削減を狙い、液化天然ガス(LNG)への燃料転換を進めている。石油や石炭に比べて、燃焼時のCO2排出量が大幅に少ない為で、四国電力と沖縄電力が初めて導入するなど、7社が合計1000㌔㍗を超えるLNG火力の建設計画を進行中だ。一方、CO2の排出量の多い石炭火力も発電効率を高めてCO2を削減する技術開発も進めており、石炭をガス化して燃焼させる新技術を導入した実証炉も9月に稼動する。

沖縄電は5月末に、吉の浦火力発電所(沖縄県中城村)を着工した。同社にとって初のLNG火力発電所で、1号機は平成22年11月、2号機は翌年5月に運転を開始する。原発がない沖縄電は発電電力量の76%を石炭火力、23%を石油火力が占めており、LNG火力の導入でCO2の削減を進める。

四国電も石油火力の坂出発電所(香川県坂出市)を改造して、LNGで発電できるようにする。1~4号機のうち、1号機、4号機をLNG対応とする。ともに22年までに改造工事を終え、運転を始める。

同じ火力発電でも、LNGは石炭や石油に比べて燃焼時に温暖化の原因となるCO2排出量が少ない。LNGを燃焼させた排熱も再利用する「コンバインドサイクル」と呼ばれる最新鋭タイプの場合、発電時のCO2排出量は石炭火力の半分以下。石油火力と比べても40%以上少ない。

一方、発電コストが安い石炭火力も、電力会社は一定量保有したい考えだ。この為、発電効率を高めてCO2排出量を削減する技術開発が進められている。

石炭をガス化してガスタービンで燃やし、さらにLNGのコンバインドサイクルと同様に廃熱を利用する「石炭ガス化複合発電(IGCC)」は最有力の次世代技術だ。現行の石炭ガスに比べて発電効率を2割高めることができ、CO2排出量は石油火力並みに低減できる。

沖縄電をのぞく電力9社と電源開発はIGCCの研究開発組織「クリーンコールパワー研究所」を設立。福島県いわき市に建設中のIGCC実証炉は9月上旬に稼動する予定だ。実証炉による試験は22年に行う予定で、中国電力が三隅発電所2号機(島根県浜田市)に導入することを決めている。

発電所からのCO2排出量は日本全体の約3割を占める。CO2削減の為には、発電時にCO2を排出しない原子力発電をいかに安定的に運転するかが重要となる。

ただ、原発の稼働率は安定しておらず、火力発電のLNG化や、石炭火力の効率向上などを推進することで、平成20~24年度の販売電力量当たりのCO2排出量を2年度に比べて2割削減することを目指してrる。


進むか 温暖化対策 ~難しい数値目標~

2007-06-04 [記事URL]

▼詳細
ドイツの保養地・ハイリゲンダムで6~8日、主要国首脳会議(サミット)が開催される。地球温暖化に関し、温室効果ガスの排出削減など具体的な数値目標で合意できるかが最大の焦点だが、日米欧の主張の隔たりは大きい。京都議定書に定めのない2013年以降の国際的温暖化対策の枠組み作りをにらみ、議論の行方が注目を集めている。

☆過去に議題となった環境問題
00年、沖縄(日)
・京都議定書の早期発効に向け緊密な協力
・再生可能エネルギーのタスクフォース設置
・森林の違法伐採への取り組み重要性を確認

01年、ジェノバ(伊)
・京都議定書への立場の違いを乗り越え協力
 (※ブッシュ政権になり米国が議定書を離脱)

03年、エビアン(仏)
・海洋環境及びタンカーの安全に関する行動計画
・水に関する行動計画

04年、シーアイランド(米)
・循環型社会の構築を目指す「3Rイニシアチブ」を日本が提案。
 08年の北海道洞爺湖サミットで成果を報告

05年、グレンイーグルス(英)
・「人間の活動等が温暖化に関連する温室効果ガスの増加の主要な原因」と合意。
「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関する対話」を進め、
08年サミットで成果を報告

☆難しい数値目標
「具体的な数値目標の設定は困難だろう」。環境省幹部は、悲観的な見通しを示す。

数値目標のキーワードは「半減」「2度上昇」だ。

議長国・ドイツは最終宣言に「2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を90年比で半減させる」「今後の温度上昇を2度以内に抑える」「増加し続けている温室効果ガスの排出量を、10~15年後に減少に転じさせる」などの目標を盛り込むよう、各国に打診した。

これは、国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が今年公表した、今後の温暖化を最小限に抑え込むためのシナリオに沿ったものだ。欧州連合(EU)として3月、「20年に90年比で20% 、排出を削減する。他国も追随すれば削減目標を30%にする」と合意するなど、環境問題を欧州の「共通外交」の手段として活用し、今後の国際交渉で優位に立つ狙いが背景にある。

一方、ブッシュ米大統領は先月31日、ワシントンでの演説で「議定書失効後の新たな枠組み構築で、他国と協力する。来年末までに、排出削減で地球規模の長期目標設定を提案する」と表明した。

各国が中期の国別目標を設け、その達成へのプログラムを策定することなどを提案。議定書の親条約「気候変動枠組み条約」の下で義務を果たすとする一方で、中印を含めた大排出国による会合を主催するとしている。

この新提案に対し、若林正俊環境相は「次期枠組みの議論に積極的に参加するという大統領の意思を反映し、高く評価したい」と述べた。だが、日本政府内には「何を目指すのかまだよく分からない」との戸惑いもある。

こうした中、カナダのハーパー保守党政権は、京都議定書で課された温室効果ガスを6%削減する義務は達成が不可能と公式に表明した。サミットでも、数値目標の設定には消極的とみられる。

日本は安倍晋三首相が「50年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を現状比で半減」という方針を表明した。「現状比」がポイントで、「90年比」のドイツ案に比べ、実質的には1~2割ほど、排出削減量が少なくて済む計算になるという。

「次期枠組みに米国や中国など途上国も参加させることを狙って、絶妙なコースに球を投げた」。環境省幹部は安倍首相の方針をこう解説する。より積極的な目標を出したEUと、現時点での数値目標設定には消極的な米国などとの間で、主導権を発揮できるか注目されている。


レジ袋削減 ~CO2はどれだけ減らせる?~

2007-05-28 [記事URL]

▼詳細
スーパーなどでレジ袋を減らす取り組みが進められています。レジ袋を作ったり、燃やしたりするときに出る二酸化炭素(CO2)を減らして地球温暖化を防止しようという趣旨です。

レジ袋削減で減らすことができるのは、化石燃料からできた袋そのものを燃やしたときに出るCO2と、袋を加工するエネルギーを生み出す際に出るCO2を足し合わせたものです。

環境省『我が家の環境大臣』では、レジ袋1枚(10g)を使わなければCO2を61g減らすことができるとされています。1日1枚だと、年間22kg減らすことができる計算になります。

ところが業界内にも詳しいデータがなく、レジ袋1枚を使わない場合の削減効果は試算する団体によってさまざま。それぞれの試算を比べると、1年間でその数は8kgにもなります。

NPO「環境市民」の杉本育生代表は「大事なのは温室効果ガスを出すようなものをなるべく使わないということ」と話しています。


ネズミ被害 ~高齢化社会への進出を防げ~

2007-05-22 [記事URL]

▼詳細
夜、電気を消す。とたんにガサゴソと音がする。ネズミどもの出現だ。天井裏を走り回り、台所を荒らす。

 近年、高齢化社会の進行と重なるように、ネズミの被害の増加傾向が聞かれるようになっている。

 ネズミは器物をかじったり、イエダニをばら撒いたりするだけでなく、さまざまな伝染病も媒介する。たかが小動物とあなどってはならない。しっかりとしたネズミ対策が必要だ。

 家ネズミには、ドブネズミとクマネズミ、ハツカネズミの3種がいる。イカリ消毒技術研究所長の谷川力さんによると、日本各地での主な被害はクマネズミによるものが多いという。

 クマネズミは南方原産なので暖かい場所を好み、木登りもうまい。高いビルや断熱材を使った戸建て住宅は快適な場所なのだ。

 かつての家ネズミの主役は大型のドブネズミだったが、ビルが多く建ち始めた昭和40年ごろから、クマネズミが増えた。その後、バブル景気の衰退を経て都市の再開発が始まるとビルが解体されていった。そこにいたクマネズミたちは周辺の住宅に移動して、現在に至っているらしい。

 移住先には高齢化の進む住居があった。お年寄りの住まいはクマネズミにとって暮らしやすい。

 長年の生活で、部屋中にいろんな品物がたまっている。食べ物の買い置きも多い。老夫婦だけになって、使わない部屋もある。階段の上り下りが大変なので2階にもあまり行かない。仏壇の花もエサになる。こうして、ネズミが安心して子孫が増やせる楽園が用意されるというわけだ。

 捕獲手段としては、シート式の粘着トラップが普及しているが、殺鼠剤を天井裏に置く作業などは、高齢者には難しい。そのうえ殺鼠剤に対する抵抗性を備え、殺鼠剤だけを食べて生きていくクマネズミも現れている。

 理解しやすい駆除講座の充実など、高齢化社会を意識した行政の対応が必要だ。ネズミ退治を装った悪徳商法の横行も許してはならない。ネズミの増減を把握するためには自治体や国レベルでの統計の設備も望まれる。

 人間の身近に暮らすネズミは社会の変化も利用する。今や高齢化を足がかりにしつつある。蔓延を防ぎたい。


環境対策 ~大手メーカーの試み~

2007-05-21 [記事URL]

▼詳細
◆二酸化炭素
 「二酸化炭素(CO2)を、さらに削減するために共同で取り組みたい」

 今月2月、リコーの渡辺龍雄・資材統括センター室長は、約300人の仕入先代表を前に、こう協力を要請した。

 リコーは、2010年度のCO2排出量を1990年度比で12%削減することを掲げている。しかし、最近は事業拡大などもあって90年度比で3~4%減にとどまる。

 目標達成の障害を探るため、事業活動が原因で生じるCO2や有害化学物質排出などの環境負荷値を、スウェーデン環境研究所の作成した指標に基づいて分析。原材料や部品の製造など調達段階での負荷値が全体の過半数を占めることが分かった。そこで、来年度から排出量の計算ソフトを主な取引先約100社に提供、排出源の内訳を明らかにし、今後の対策に活かす。海外の取引先にも協力を働きかける。

 同社調達改善グループの菅野実リーダーは「環境負荷の小さい部品の追求は、企業の義務であり、利益の創出と競争力の向上に繋がる」と語る。

◆有害化学物質
 トヨタは05年、自動車の生産開始前の企画、設計段階で環境負荷を評価する「Eco-VAS(エコバス)」制度を導入した。チーフエンジニアが担当車両の環境負荷の低減目標を設定する。これまでに、部品会社など取引先と協力し、さび止めでボルトなどに使われた有害化学物質の六価クロムを、害の無い三価クロムに変更。発光のため水銀を使っていたメーターのバックライトをLED(発光ダイオード)に転換した。

◆プラスチック
 シャープは、5回程度再利用できるプラスチックを開発。01年から取引先の「関西リサイクルシステムズ」と協力し、回収した洗濯機の水槽を破砕して再び水槽などに使っている。プラスチックのリサイクル材は耐久性に問題があり、再利用も多くが一回限り。この開発により、リサイクル材使用量は5年間で15倍の620㌧に急増した。家電製品は長期間、利用されるので埋め立てや焼却量を軽減できるという。今年4月には、環境負荷の小さい植物系プラスチックを混ぜても繰り返し利用できるプラスチックを開発した。シャープ広報室は「石油由来の原料削減が求められている。様々な原料から何度も利用できる素材が必要だ。


温暖化対策に貢献

2007-05-09 [記事URL]

▼詳細
地球表面の7割を占める海は、毎年約20億㌧の二酸化炭素(CO2)を吸収している。これは、全世界の1年間の化石燃料燃焼によるCO2排出量の約3分の1。海のCO2吸収量が今後どう推移するのかを探ることは、気候変動予測や温暖化対策に役立つため、国内でも船舶による観測やブイを使った自動観測装置などの研究が進んでいる。

◇大気の60含有
 海は大気中の約60倍のCO2を海水中に溶け込ませており、一部は植物プランクトンの光合成に利用されている。大気中のCO2濃度(379ppm)はより海洋の濃度が低くなると海洋はCO2を吸収、大気中より高くなると放出する。

 CO2の排出が増えて大気中の濃度が増加すれば、理論的には海洋の吸収量も増えるが、東京大海洋研究所の植松光夫教授は「温暖化で海洋表面の水温が上昇すると、表層域と深層域との水温差が広がり海水が混ざりにくくなる。深層域からの栄養分の供給が減るので、光合成のためのCO2を取り込む表層域の植物プランクトンも減少し、CO2吸収量が減ることもある」と説明する。

 国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が01年に出した第3次報告は、海洋によるCO2吸収量は21世紀中に40億~60億㌧に増えると予測した。

 一方、今年2月の第4次報告では、地球温暖化によって、人為的な排出量に対する陸と海洋のCO2吸収比率が下がり、大気の残留比率が増えるとの見解が示された。吸収量は現在のペースでは増えないとしている。

 国立環境研究所地球環境研究センターの野尻幸宏副センター長は「今後、CO2の吸収量がどうなっているかを探るには、より詳細な観測データが必要だ」と話す。

◇貨物船に観測器
 特定の観測船を使う長期観測は予算面などで限界がある。同研究所は長期貨物船に機器を取り付けて、海洋表面のCO2観測を95年から続けている。表面のCO2濃度がわかれば、モデルにあてはめることで、その海域のCO2吸収量を導き出せるからだ。

 現在も日本の船会社の協力を得て、北米と豪州の2航路で観測中。こうした取り組みは欧米にも広がり始め、北半球のデータは集まりつつあるが、南半球は乏しいのが、現状という。

◇自動採水の成果
 海洋研究開発機構むつ研究所(青森県むつ市)はCO2の吸収量が多いことで知られるカムチャツカ半島南方沖800㌔の北太平洋海域(水深5200㍍)で、05年3月から1年以上連続して海水を自動採取することに成功した。研究グループの本田牧生サブリーダーは「一度設置すれば、1年後にサンプルを回収するまで放っておいても観測可能なのがメリット」と説明する。

 観測装置は全長約5000㍍以上もあるワイヤーロープの先端にブイが付いたもので、装置を海底に係留すると表層でブイが浮く仕組みだ。自動採水装置は水深40㍍に、植物プランクトンの殻などを集める装置は水深150㍍に取り付けられた。

 同グループの研究は、海のCO2濃度を直接観測するわけではないが、CO2の吸収に大きな役割を果たしている植物プランクトンを通じて、CO2が海中で循環する過程を解明しようとする狙いだ。海洋のCO2吸収量は風や水温などの影響を受けるため、海域や季節によって異なるが、一般的に海の表面に栄養分が多い海域では、植物プランクトンによる光合成が活発なため、吸収量が多い。

 本田さんは「植物プランクトンが増殖した7月には、増殖後に死んだプランクトンの死骸として有機炭素が速やかに深海部に運ばれたことが、1年間の観測で分かった。海外の研究機関と協力しさまざまな海域で観測を進め、地球温暖化研究にも役立てたい」と話す。


世界食料 黄信号 ~中国経済成長・バイオ燃料の急増~

2007-05-04 [記事URL]

▼詳細
世界の食糧事情が大きく悪化するのではないかとの懸念が広がっている。中国などの経済成長や発展途上国の人口増で食糧需要がどんどん増えている上、環境問題や資源枯渇への懸念を背景に穀物をバイオ燃料に振り向ける動きが強まっているためだ。地球温暖化が食糧生産に与える影響も心配で、食料自給率が低い日本は将来に向け安定供給のための戦略を迫られている。

  ●値上げ
先月、果汁飲料の値上げ発表が相次いだ。明治乳業が100%果汁「ミニッツメイド」(1㍑)の希望小売価格を21円引き上げたほか、日本ミルクコミュニティ、キリン・トロピカーナなども値上げを決めた。オレンジの産地・米フロリダ州がハリケーン被害に遭ったり、ブラジルでバイオエタノール用サトウキビを生産するためオレンジ畑が次々につぶされたりしているためだ。

 製粉各社は近く小麦粉価格を24年ぶりに引き上げる。昨年の豪州の干ばつなどで小麦の政府売り渡し価格が平均1.3%上がったためで、パンなども値上がりしそうだ。

 世界の穀物取引の中心、米シカゴ商品取引所では昨年後半からトウモロコシ、小麦、大豆の価格が急騰している。水産物も、マグロの漁獲制限をはじめとした資源の制約と、中国、欧州など世界的な魚食の拡大で値上がり傾向にある。

  ●人口増
 世界の食糧需要を押し上げているとみられるのが経済成長が続く中国だ。所得水準の向上で中国の肉類、油脂類、魚介類の1人当たりの消費量は90~03年の間にほぼ倍増した。一方、穀物生産は伸び悩み、中国は04年に農産物の純輸入国に転じた。食料の大半はまだ自給を維持しているが、大豆の輸入は年約3000万㌧で世界一。「農村部の食生活が都市部に近づくと食糧消費はさらに増える」との予想が多い。また、インドをはじめ発展途上国の人口増も、世界の食糧自給に影響を及ぼす可能性が高い。

  ●高騰
 ブッシュ大統領は1月の一般教書演説で、10年後に米国のガソリン消費量を20%削減し、トウモロコシを原料にしたバイオエタノールなどの代替燃料を年約1300億㍑供給する目標を掲げた。06年のバイオエタノール生産量の7倍で、地球温暖化対策であると同時に「原油の中東依存からの脱却」を目指す安全保障戦略でもある。これを受け、シカゴ商品取引所のトウモロコシ価格は2月に前年のほぼ2倍に達した。

 米国のトウモロコシ輸出は世界の約7割を占めることから、価格高騰のあおりは他国にも及んでいる。トウモロコシを主食とするメキシコでは、抗議デモが起きるなど社会問題に発展。飼料の価格も上がり、日本の畜産農家に影響が出ている。今のところ、肉の価格には転嫁されていないが、飼料の高値が続くと肉も値上がりの可能性が出てくる。


バイオガソリン ~いいことずくめではない~

2007-04-27 [記事URL]

▼詳細
バイオエタノールを混合したガソリンの試験販売がスタートする。10年度までに全国で発売される予定だ。地球温暖化対策の一環だが、問題もある。

トウモロコシやサトウキビなどの植物は二酸化炭素(CO2)を吸収して成長する。こうした植物を原料としたエタノールなどバイオ燃料を燃焼させても、そこから出るCO2は京都議定書で定めた削減対象とはならない。

 政府は10年度に原油換算で50万klのバイオ燃料を輸送用に導入する計画だ。このうち21万klを石油業界が供給することになっている。

 バイオエタノールを混合したガソリンは沖縄などで利用が始まっているが、27日からは首都圏の50ヶ所のスタンドで試験販売がスタートする。10年度にはガソリン販売の2割がバイオガソリンになるという。

 試験販売するバイオガソリンの混合比率は3%。性能や価格もレギュラーガソリンと同じで、使用する自動車も改造など特別な措置は必要ない。しかし、バイオ燃料はいいことずくめではない。

 混合は製油所で行うETBE方式と、直接ガソリンと混ぜる方式がある。石油業界は現在の石油の流通形態を維持しようとETBE方式を主張しているが、バイオ燃料の混合率を高めるのが難しいとして直接混合方式の導入を求めている環境省と対立している。

 ブラジルなどで燃料用のサトウキビの使用が拡大した結果、砂糖価格が高騰したのに続いて、トウモロコシの価格が急騰している。米政府はガソリンの年間消費量を10年間で20%削減する目標を掲げ、代替燃料となるエタノールなどバイオ燃料の増産を促しており、この結果、トウモロコシの価格が急騰している。

 トウモロコシが主食のメキシコでは、価格急騰に講義して大規模なデモに発展している。日本でも飼料が値上がりするなど影響が出ている。農産物の増産には限界があり、その中でバイオ燃料用の消費が拡大すれば、特に貧しい国では食糧不足が深刻化しかねない。森林の伐採など自然破壊につながる可能性もある。

 米大統領選挙の勝敗を決する役割を果たしたオハイオ州は、コーンベルト地帯にある。米国のバイオ燃料ブームは選挙対策という政治的な要素も帯びている。欧州などでも余剰農産物対策からバイオ燃料の利用拡大が始まっており、エネルギー政策に便乗した農業対策の側面が強い。

 世界最大の食料純輸入国の日本は欧米とは事情が違う。バイオ燃料の自給は難しく、欧米並みの水準に利用を拡大するのは容易ではない。

 バイオ燃料はCO2排出の抑制という点からは望ましい。しかし、それに伴う弊害もある。廃材や枯れ草などを利用したバイオ燃料の研究を進め、食料用の農産物の大量消費につながらないようにすべきで、それが可能になるまでは、バイオ燃料の利用拡大には慎重に対応すべきだろう。


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