進むか 温暖化対策 ~難しい数値目標~
2007-06-04 [記事URL]
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ドイツの保養地・ハイリゲンダムで6~8日、主要国首脳会議(サミット)が開催される。地球温暖化に関し、温室効果ガスの排出削減など具体的な数値目標で合意できるかが最大の焦点だが、日米欧の主張の隔たりは大きい。京都議定書に定めのない2013年以降の国際的温暖化対策の枠組み作りをにらみ、議論の行方が注目を集めている。
☆過去に議題となった環境問題
00年、沖縄(日)
・京都議定書の早期発効に向け緊密な協力
・再生可能エネルギーのタスクフォース設置
・森林の違法伐採への取り組み重要性を確認
01年、ジェノバ(伊)
・京都議定書への立場の違いを乗り越え協力
(※ブッシュ政権になり米国が議定書を離脱)
03年、エビアン(仏)
・海洋環境及びタンカーの安全に関する行動計画
・水に関する行動計画
04年、シーアイランド(米)
・循環型社会の構築を目指す「3Rイニシアチブ」を日本が提案。
08年の北海道洞爺湖サミットで成果を報告
05年、グレンイーグルス(英)
・「人間の活動等が温暖化に関連する温室効果ガスの増加の主要な原因」と合意。
「気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関する対話」を進め、
08年サミットで成果を報告
☆難しい数値目標
「具体的な数値目標の設定は困難だろう」。環境省幹部は、悲観的な見通しを示す。
数値目標のキーワードは「半減」「2度上昇」だ。
議長国・ドイツは最終宣言に「2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を90年比で半減させる」「今後の温度上昇を2度以内に抑える」「増加し続けている温室効果ガスの排出量を、10~15年後に減少に転じさせる」などの目標を盛り込むよう、各国に打診した。
これは、国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が今年公表した、今後の温暖化を最小限に抑え込むためのシナリオに沿ったものだ。欧州連合(EU)として3月、「20年に90年比で20% 、排出を削減する。他国も追随すれば削減目標を30%にする」と合意するなど、環境問題を欧州の「共通外交」の手段として活用し、今後の国際交渉で優位に立つ狙いが背景にある。
一方、ブッシュ米大統領は先月31日、ワシントンでの演説で「議定書失効後の新たな枠組み構築で、他国と協力する。来年末までに、排出削減で地球規模の長期目標設定を提案する」と表明した。
各国が中期の国別目標を設け、その達成へのプログラムを策定することなどを提案。議定書の親条約「気候変動枠組み条約」の下で義務を果たすとする一方で、中印を含めた大排出国による会合を主催するとしている。
この新提案に対し、若林正俊環境相は「次期枠組みの議論に積極的に参加するという大統領の意思を反映し、高く評価したい」と述べた。だが、日本政府内には「何を目指すのかまだよく分からない」との戸惑いもある。
こうした中、カナダのハーパー保守党政権は、京都議定書で課された温室効果ガスを6%削減する義務は達成が不可能と公式に表明した。サミットでも、数値目標の設定には消極的とみられる。
日本は安倍晋三首相が「50年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を現状比で半減」という方針を表明した。「現状比」がポイントで、「90年比」のドイツ案に比べ、実質的には1~2割ほど、排出削減量が少なくて済む計算になるという。
「次期枠組みに米国や中国など途上国も参加させることを狙って、絶妙なコースに球を投げた」。環境省幹部は安倍首相の方針をこう解説する。より積極的な目標を出したEUと、現時点での数値目標設定には消極的な米国などとの間で、主導権を発揮できるか注目されている。