バイオガソリン ~いいことずくめではない~

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バイオガソリン ~いいことずくめではない~

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バイオエタノールを混合したガソリンの試験販売がスタートする。10年度までに全国で発売される予定だ。地球温暖化対策の一環だが、問題もある。

トウモロコシやサトウキビなどの植物は二酸化炭素(CO2)を吸収して成長する。こうした植物を原料としたエタノールなどバイオ燃料を燃焼させても、そこから出るCO2は京都議定書で定めた削減対象とはならない。

 政府は10年度に原油換算で50万klのバイオ燃料を輸送用に導入する計画だ。このうち21万klを石油業界が供給することになっている。

 バイオエタノールを混合したガソリンは沖縄などで利用が始まっているが、27日からは首都圏の50ヶ所のスタンドで試験販売がスタートする。10年度にはガソリン販売の2割がバイオガソリンになるという。

 試験販売するバイオガソリンの混合比率は3%。性能や価格もレギュラーガソリンと同じで、使用する自動車も改造など特別な措置は必要ない。しかし、バイオ燃料はいいことずくめではない。

 混合は製油所で行うETBE方式と、直接ガソリンと混ぜる方式がある。石油業界は現在の石油の流通形態を維持しようとETBE方式を主張しているが、バイオ燃料の混合率を高めるのが難しいとして直接混合方式の導入を求めている環境省と対立している。

 ブラジルなどで燃料用のサトウキビの使用が拡大した結果、砂糖価格が高騰したのに続いて、トウモロコシの価格が急騰している。米政府はガソリンの年間消費量を10年間で20%削減する目標を掲げ、代替燃料となるエタノールなどバイオ燃料の増産を促しており、この結果、トウモロコシの価格が急騰している。

 トウモロコシが主食のメキシコでは、価格急騰に講義して大規模なデモに発展している。日本でも飼料が値上がりするなど影響が出ている。農産物の増産には限界があり、その中でバイオ燃料用の消費が拡大すれば、特に貧しい国では食糧不足が深刻化しかねない。森林の伐採など自然破壊につながる可能性もある。

 米大統領選挙の勝敗を決する役割を果たしたオハイオ州は、コーンベルト地帯にある。米国のバイオ燃料ブームは選挙対策という政治的な要素も帯びている。欧州などでも余剰農産物対策からバイオ燃料の利用拡大が始まっており、エネルギー政策に便乗した農業対策の側面が強い。

 世界最大の食料純輸入国の日本は欧米とは事情が違う。バイオ燃料の自給は難しく、欧米並みの水準に利用を拡大するのは容易ではない。

 バイオ燃料はCO2排出の抑制という点からは望ましい。しかし、それに伴う弊害もある。廃材や枯れ草などを利用したバイオ燃料の研究を進め、食料用の農産物の大量消費につながらないようにすべきで、それが可能になるまでは、バイオ燃料の利用拡大には慎重に対応すべきだろう。



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