豪、温暖化に力 ~民間主催 家屋・ビル一斉消灯も~
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オーストラリアが地球温暖化対策に力を入れている。シドニー市内では31日夜、民間団体の呼びかけで1時間にわたって家屋やビルの電灯が一斉に消された。環境政策を推進するハワード首相は同日、9月に同国で行われるアジア太平洋経済協力機構(APEC)首脳会議の最重要議題として、温暖化対策を取り上げると発表した。
この日午後7時半から1時間、シドニーで行われた消灯イベントには、約5万5000軒の家屋や企業、商業施設などが参加。観光名所のハーバーブリッジとオペラハウスの照明も消え、中心部は”暗闇”に包まれた。
豪州は国内電力の9割を石炭火力に依存し、国民1人当たりの温室効果ガス排出量が世界最大規模といわれている。その温室効果ガスの削減義務を先進国に課す「京都議定書」への参加を見送ったハワード政権が最近、環境政策を積極に打ち出している。
2月には、2010年までに家庭や企業の白熱電球を医療用などを除き廃止し、電力消費量の少ない蛍光灯タイプに切り替える方針を世界で初めて表明。3月には、温室効果ガスの削減につながる植林事業などを対象とした基金(2億豪ドル=約190億円)創設を発表した。森林破壊が進む東南アジアなどを支援する。
ハワード首相の政策転換の背景には、昨年から記録的な干ばつが続くなど国内が異常気象に見舞われているという事情がある。また、環境政策への国民の関心も高まっており、今年後半に予定される総選挙で大きな争点に浮上するのは確実で、野党の労働党に対抗する狙いもある。
クリーンなエネルギーとして原子力発電所が世界的に注目される中、その燃料となるウランの輸出拡大(ウラン埋蔵量は世界一)を図ろうとする戦略も指摘されている。ハワード政権は国際社会の環境政策をリードするためにも、9月のAPECの場を利用する考えだ。