米国、エタノールブームに陰りが…
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ガソリンの代替燃料としてブッシュ米政権が普及拡大に力を入れているエタノールの価格が、下落を続けている。原料であるトウモロコシの増産やエタノール工場の建設ラッシュが起きたが、以外にも供給が過剰となり、計画修正の動きも出てきた。世界の食料価格高騰にも波及したブームに、早くも陰りが生じ始めたようだ。
シカゴ商品取引所のエタノール先物価格は、1ガロン当たり1.5㌦強。5月の約2.2㌦から30%、年末の2.5㌦から40%下落した。
トウモロコシ需要を見込んで中西部などの農家は、大豆や麦など他の穀物から、トウモロコシ生産にシフト。ウォール街(金融街)から巨額の投資資金も製油所建設につぎ込まれ、製油所は119ヶ所にのぼり、86ヶ所が建設中だ。生産能力は昨年時点で48億ガロンだったが、今年は78億ガロンになる見通しだという。
ところが、生産業者は、原料のトウモロコシ価格の高止まりと、エタノール価格の下落の二重ショックで利益が圧迫され、中小の一部業者は倒産の危機にある。業界アナリストの間では「投資計画を修正すべきだ」との声が上がり、建設の延期や中止も起きている。
「エタノールは腐食性が強く、国内の燃料パイプラインを通じて輸送できない」(米紙ニューヨークタイムズ)ため、コスト高のトラックや船の輸送に頼らざるを得ない。さらにエタノール85%、ガソリンを15%の比率で混合した燃料「E85」を販売するのは、全米約17万9000スタンドのうち、約1000しかない。こうした流通インフラの限界が、需要に火がつかない最大の要因な様だ。