エタノール・ブーム 

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エタノール・ブーム 

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米国の「偉大なる田舎」ミッドウェスト(中西部)が、エタノール・ブームにわいている。ブッシュ政権の代替燃料利用促進政策で、原料のトウモロコシの生産農家や製造工場は、軒並み生産規模を拡大している。米国のトウモロコシ産地は、伝統的地場産品がもたらした新たな可能性に興奮ぎみだ。一方でエタノール需要が拡大したためにトウモロコシの価格が上昇し、食料・飼料価格への跳ね返りも懸念されている。メキシコでは既に伝統的主食パン「トルティーヤ」の価格高騰が起きている。

映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台になった中西部アイオワ州は米国屈指のトウモロコシの生産地だ。米再生可能燃料協会(RFA)によると、アルコールの一種であるエタノールの生産能力は年間約1240万㌔㍑で、全米の4分の1を超え、50州の中でトップだ。

「この辺りの農家は軒並み、作付面積を増やしている。前年比で15~20%増しくらいかな」とラリー・ジョンズさん(67)。同州東部セントラルシティで農業を営んで半世紀になる。見渡す限り広がる畑には、作付けしたばかりのトウモロコシの若芽が育つ。「エタノール需要のおかげでトウモロコシ価格は去年より3割は上がっている。みんなハッピーだよ」と顔をほころばせた。

米国では、エタノールの原料は9割がトウモロコシ。米農務省の推計では、07年のトウモロコシ作付面積は約3660㌶で前年比で15%増。1944年以来の高水準だ。これまでは1ブッシェル(約25㌔)が2㌦前後だったトウモロコシの価格は昨年から3~4㌦に高騰している。農地の借地料も上昇傾向にあり、今年は1エーカー(約4047平方㍍)あたり150㌦と前年比で10%近く上がった。

アイオワ州立大農業・地場開発センター(同州エームス)のチャド・ハート博士は「エタノール・ブームの州経済への貢献は着実に拡大している」と言う。

イラク戦争など不安定な中東情勢に伴うガソリン価格の高止まりに頭を悩ませるブッシュ米大統領は、昨年の一般教書(施政方針)演説で「石油中毒」からの脱却を宣言。今年の演説では、10年間でガソリン使用量を20%減らし、エタノールなどの代替・再生可能燃料の使用目標値も350億ガロン(約1億3200万㌔㍑)に引き上げる構想を掲げた。「12年までに75億ガロン」としていた、これまでの目標値の5倍だ。

国策となったエタノール増産に対応しようと、アイオワ州の製造工場の多くは施設拡大に取り組んでいる。同州北部メーソン・シティの農家や実業家らが出資するゴールデン・グレイン・エナジー社もその一つだ。6月に入って新規施設が稼動し、年間生産量は倍近くの約38万㌔㍑に増加した。さらに増産する計画もある。社長のウォルター・ウェンドランドさんは元トウモロコシ農家。「農作物価格は上下するのが常だ。エタノール需要は当分伸びるはず」と今後の成長に期待する。

エタノール特需はトウモロコシ集配業者にも好影響を与えている。日本向け輸出などを扱うパティソン・ブラザーズ社(同州北東部フェイエット)では、米国内需要の増加を受け、06年に全取扱量の9割を占めた輸出分は07年は8割程度に減りそうだという(同社の取引担当、ジョン・ウィットル氏)。

トウモロコシを使ったエタノール生産に対しては「サトウキビの方が生産効率がよい」「需要が逼迫(ひっぱく)して食品・飼料価格を押し上げる」との指摘もある。政府はエタノール混合ガソリンの販売業者や小規模製造工場に補助金を出しているが「経済性に問題がある」との批判も聞かれる。ただエタノール増産はブッシュ政権だけでなく、08年大統領選の主要候補らも支持しており、国を挙げての支援は当面続きそうだ。


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