火力発電 ~CO2削減へ
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電力会社が火力発電所の二酸化炭素(CO2)の排出削減を狙い、液化天然ガス(LNG)への燃料転換を進めている。石油や石炭に比べて、燃焼時のCO2排出量が大幅に少ない為で、四国電力と沖縄電力が初めて導入するなど、7社が合計1000㌔㍗を超えるLNG火力の建設計画を進行中だ。一方、CO2の排出量の多い石炭火力も発電効率を高めてCO2を削減する技術開発も進めており、石炭をガス化して燃焼させる新技術を導入した実証炉も9月に稼動する。
沖縄電は5月末に、吉の浦火力発電所(沖縄県中城村)を着工した。同社にとって初のLNG火力発電所で、1号機は平成22年11月、2号機は翌年5月に運転を開始する。原発がない沖縄電は発電電力量の76%を石炭火力、23%を石油火力が占めており、LNG火力の導入でCO2の削減を進める。
四国電も石油火力の坂出発電所(香川県坂出市)を改造して、LNGで発電できるようにする。1~4号機のうち、1号機、4号機をLNG対応とする。ともに22年までに改造工事を終え、運転を始める。
同じ火力発電でも、LNGは石炭や石油に比べて燃焼時に温暖化の原因となるCO2排出量が少ない。LNGを燃焼させた排熱も再利用する「コンバインドサイクル」と呼ばれる最新鋭タイプの場合、発電時のCO2排出量は石炭火力の半分以下。石油火力と比べても40%以上少ない。
一方、発電コストが安い石炭火力も、電力会社は一定量保有したい考えだ。この為、発電効率を高めてCO2排出量を削減する技術開発が進められている。
石炭をガス化してガスタービンで燃やし、さらにLNGのコンバインドサイクルと同様に廃熱を利用する「石炭ガス化複合発電(IGCC)」は最有力の次世代技術だ。現行の石炭ガスに比べて発電効率を2割高めることができ、CO2排出量は石油火力並みに低減できる。
沖縄電をのぞく電力9社と電源開発はIGCCの研究開発組織「クリーンコールパワー研究所」を設立。福島県いわき市に建設中のIGCC実証炉は9月上旬に稼動する予定だ。実証炉による試験は22年に行う予定で、中国電力が三隅発電所2号機(島根県浜田市)に導入することを決めている。
発電所からのCO2排出量は日本全体の約3割を占める。CO2削減の為には、発電時にCO2を排出しない原子力発電をいかに安定的に運転するかが重要となる。
ただ、原発の稼働率は安定しておらず、火力発電のLNG化や、石炭火力の効率向上などを推進することで、平成20~24年度の販売電力量当たりのCO2排出量を2年度に比べて2割削減することを目指してrる。