戦略アセス
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大規模公共事業などを実施する際、計画段階で環境への影響を調査する戦略的環境影響評価(アセスメント)のガイドライン案が環境省の研究会で了承された。同省は最終的には法改正を目指すが、当面はパブリックコメントを募った上で、正式のガイドラインとして導入を図る。
国際的には欧米のみならず、アジアにおいても導入している国がある。環境アセス後進国といわれてきた日本だが、ようやく国際標準に近付くことになる。
環境アセスメントは60年代末に米国で制度化された。日本でも70年代初頭から公共事業や発電所、新幹線などを対象に導入されたが、法制化は産業界や自民党の反対で97年まで遅れた。地方自治体も独自に導入した。ただ、この段階では実施することが決まった事業の環境への影響を調査するもので、多くの場合、事業を正当化する性格が強かった。
大規模事業が対象の環境影響評価法に基づくアセスメントも、計画決定された事業に限られるという欠陥はあるが、これまでに終了した78件について25件には環境相などの意見で、代償措置が取られた。環境影響を緩和する効果は出てきている。
だが、事業に伴う重大な環境破壊などが予測されても、事業アセスでは、計画そのものの見直しを迫ることはできない。戦略アセスはここに切り込もうというものだ。事業者は計画検討段階で住民や専門家の意見を聞きながら立地位置や規模などの異なる複数案を提示し、それをもとに環境省や自治体の専門家による審査会の評価も入れて計画を策定する。計画段階で事業構想の抜本的な見直しや中止もあり得る。
これに対して、電源立地を抱える経済産業省は反対の姿勢を崩していない。発電所建設が円滑に進まないことを危惧してのことだ。
戦略アセス導入の反対論としては説得力に欠ける。公共事業のみならず、公共性の高い発電所でも十分な環境保全は当然だ。環境への悪影響を抑えられる代替案があるとすれば、それを選ぶべきである。さらに言えば、電源立地ではこれまでに住民運動などの高まりで計画変更や白紙撤回となったところもある。
一方、構想段階で住民の意見を聴取するパブリック・インボルブメント(PI)といわれる制度を取り入れている国土交通省は受け入れの方針だ。
大型公共事業では環境破壊を引き起こした案件も少なくない。当初から無駄と指摘される事業もあった。PIは事業を円滑に進めていくための仕組みだ。戦略アセスが導入され、住民参加や専門家の関与が円滑に機能すれば、こういったことをあらかじめチェックすることができる。公共事業改革にも寄与する。
戦力アセスは国に先立って地方自治体で進んでいる。昨年決定された第3次環境基本計画にも制度化の検討が盛り込まれている。政府は早期導入の意思統一を図るべきだ。